10.DRAGON OF THE DIAMONDDUST
「なんだ、そりゃ?」
バニラアイスを口に運びながら話すの説明を聞いていた冬獅郎は、彼にしては珍しく 素っ頓狂な声をあげた。
「あ、だから力を制御する為の訓練なんだって。」
「違うな。奴に遊ばれてんだ。」
「遊ばれてる?」
「おめーならそんなやり方でなくても、力のコントロールは身につけられる。」
「で、でも・・・・流転力は危険だから、浦原サンしか―――」 「それがなんで KISSに繋がンだっ!?」
冬獅郎の語気が荒いのに驚いて アイスを食べる手を止めた。
「そんなプレッシャー与えられて 集中できっかよ! 奴は立場を利用して 楽しんでやがんだ。」
「職権乱用ってコト?・・・・・でも、さっき見たよね。あたし、岩を吹き飛ばすくらいのエネルギーを放出してしまうんだよ?」
「仮にも 護廷十三隊の隊長格が、素人相手に遅れをとるかよっ。」
「あ、なにそれ! なんかバカにされてるみたいでムカつく。」
「バカになんかしてねーよ。事実を言ったまでだ。」
「うう〜、そうかもしれないけど〜」
「オレが 会得させてやる。」
―――――奴の好きにさせてたまるかっ!
冬獅郎は、鬼道を使ってのラケットの先に小さな氷塊を作った。
「さっきのでわかった。お前の力は、水と連動している。だから、氷とも共鳴するはずだ。」
「――――ちょっと、重いんだけど」
「重さがあった方が 意識しやすいだろ?」
「ま・・ね」
「両手でしっかり握って振ってみろ。」
「ん。」
重くはあったが、いざ振ってみると遠心力で引っ張られるように感じた。
「氷塊に意識をのせろ。あの日、カリヤのドールと相対した時の感覚を 思い出せばいい。」
「あの時の感覚?」
「ああ。あの時、その流転力とかいうのが自然に発動したんだと思う。ドールに関しては、お前が吸収したのか 相殺したのかまではわかんねーけど、ただ 風を送ったぐらいであのドールが消せたはずねーからな。」
あの日、カリヤから分離したドールに立ち向かった時のことを思いだす。
――――あの時、あたしは 無心にラケットを振った。あの“風”を消滅させることだけを考えて・・・・・
バトミントンの試合に臨む時のように 身体中の血がざわめき始める。
その流れを、握ったラケットに注ぎ 氷塊に集めるように イメージした。
――――いけるかな?
ラケットを振り下ろそうとしたの手首を 冬獅郎が握ってとめた。
「え?」
「おい、ちゃんと目ぇ開けろ。」
知らぬ間に目を閉じていた。
「あ・・・浦原さんが、見ない方が気配を探る訓練になるからって・・・・見ないでやるのかと」
「あのな、素人がそんなコトいきなりできっかよ。まずは、目で捉えて狙えるようになるコトだ。標的を睨みつけてりゃ自然に意識もそっちに向くからよ。あの時もそうだったろ?」
「はいはい。」
両手で握り慣れないグリップに 汗が滲む。
岩を睨み、力を込めて振ろうとすると再び冬獅郎に止められた。
「今度は 何?」
「力み過ぎ」
「っもぉ!いちいち煩いっ!一回、振らせて。」
ラケットが ぶんっと空気を切り裂く音がしたが それだけだった。
「う”う”う”〜〜〜〜〜」
冬獅郎はと言うと、呆れ顔で 大きくため息をついていた。
「ムカつく〜〜〜!」
悔しくて やたらにラケットを振りまわす。
そのうち、ラケットの先の氷塊が溶けたらしく 外れて 岩にコンッとぶつかった。
「あ・・・・・・」
「(くっくっくっくっく)・・・・・」
背中に 冬獅郎が笑いをこらえている気配が ひしひしと伝わってくる。
「くぅ〜〜〜〜〜〜っ!」
恥ずかしくて振り返れない。
やがて、ひとしきり笑って落ち着いたのか、冬獅郎が近づいてくる足音がした。
「。」
「なによぉ。 いっそ もっと大声で笑えば?」
「おめー、実戦でねーと本気になれねーんだな。」
たしかに バトミントンの試合では、練習より本番で予想外の力を発揮し 結果を出してきただった。
浦原は いち早く そんな彼女の性格を見抜いて“目隠し鬼”を提案したのかもしれない。
―――――だが、そうだとしても・・・・・・・許せねぇ。
冬獅郎には が 穢されていくように思えて耐えがたかった。
――――さっきので、コツはつかめてるはずだ。ならば、あと 一押し・・・・
「荒療治になるが、きっちり会得しろよ。」
そう言って冬獅郎は 義骸から死神に戻った。
「え・・・・? なに?」
「霜天に坐せ、氷輪丸!」
キラキラとダイアモンドダストが降り注ぎ、氷雪の龍が 宙に踊った。
「ちょっ、、、な、、なんなの―――――っ!?」
「行くぜ。」
氷雪の龍が の左脇ぎりぎりをかすめる。
風圧に弾かれたは ラケットを抱きしめた形で 転がった。
「大気に水分が含まれる限り、氷輪丸は不死身だ。 遠慮なく 打ってこいよ。」
手をついて 顔を上げたの正面に 氷雪の龍の顔が迫る。
「うそっ!?」
かろうじて 身をかわす。
「逃げるだけじゃ意味ねーぞ!」
は、立ち上がってラケットをいつもの持ち方に握りなおしたが、体勢を整える前に氷龍の衝撃に襲われる。
「マジ〜〜〜〜っ?!」
横っ飛びに飛んで逃れた。
間髪いれずに 氷雪の龍は舞い戻り、背後から襲い掛かる。
「うっ!」
転がって逃げるしかなかった。
氷雪の龍から飛び散った氷塊が パラパラと降ってくる。
「っ、こいよ! 流転力をコントロールしてーんだろ?」
「したいよ、したいに決まってんじゃん! けど これって、素人相手に 酷いよ!」
ラケットが手の中で 熱を帯びたように感じた。
「浦原に負けっぱなしでいーのかよ?!」
「いいわけないじゃんっ!」
再び宙をひと舞いした氷雪の龍が、速度を上げて迫る。
「てめぇ、本心ではあいつに―――――」「な、なに言ってんのさ、バカ――――っ!!」
は肩膝をついた姿勢から ラケットを思いっきり振り上げた。
そして――――――
眩い光と共に氷雪の龍の姿が 消し飛び、は その場にがっくりとひざまずいた。
「っ!」
冬獅郎が駆け寄ると、は ゆっくり面をあげた。
「ごめん・・・・・・冬獅郎の龍、消しちゃった・・・・・」
「いや、氷輪丸はなんともねぇ。それより、お前・・・・」
の手に握られていたはずのラケットは無く、ひと振りの細身の刀が光りを放っていた。
「―――――斬魄刀・・・・なのか?」
不思議な刀身だった。
表面はまるで薄い氷でできているように見え、その中心部には碧く光る液体が流動し、呼吸をしているかのようだった。
「――――『流れゆき 留まらぬ 無常の刃。我は、生々流転“碧刃八咫鏡”。』」
「“あおのやいばやたのかがみ”?」
「うん・・・・・そう聞こえた。」
その刀は、笑いさざめくようにひときわ碧く輝くと 気化するように消滅した。
目覚める?
11.SWORD OF THE CONSTANT CHANGE
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