十番隊執務室の扉を ノックした。
なんの応答も無い。
―――――あれ?帰ってないのか?
扉をそぉーっと 開けて入る。
灯りが消えたままの薄暗い室内。
窓の外は、雨。
その薄明るい窓に浮かび上がる 懐かしいシルエット。
ほんの 数時間だったはずなんだけど、もう何日もたったような気さえする。
「随分、楽しそうだったじゃねぇか。」
「冬獅郎、来てたんなら――――」 「俺は、隊長だ。」
「わかってるよ。それが、ナニ?」
「あの場に俺が 顔出せばどうなる?」
「あ・・・・・」
そっか・・・・
一角や弓親さんはそうでもないけど、一般平隊士にとっちゃ 隊長と遊ぶなんて 滅相も無いって感じ?
あの、優しい卯ノ花隊長が 現れただけで 緊張感が走って、それまでと 空気が変わった。
ましてや 気難しい日番谷隊長登場なんてことになったら みんな萎縮しちゃうか・・・・。
「ごめん。冬獅郎も遊びたかった?」
「別に・・・」
「え〜っと、乱菊さんは・・・?」
「松本は、いつものパターンだ。」
あ・・・、飲みに行ったんだ・・・・。
冬獅郎、お子様だから 連れてってもらえなかったかー?
暗闇に浮かぶ背中が怖いぞ。
少し、近寄ってみる。
う〜ん、やっぱりなんか怒ってる。
って言うか・・・・どっちかって言うと・・・・拗ねてる?
「――――ここに―――」
「??」
「この部屋に居ろって、言ったろう?」
「う〜ん、そうだっけ?」
「
・・・・」
ようやく 冬獅郎が振り返った。
「だって、なんにもすることなくて退屈で死にそうだったしぃ。」
「だから、書物でも読んでろっつったろ?"晴耕雨読"って 言って・・・・なんだ、知らねぇのか?」
「書物ってねぇ、あんな難解な物 あたしに読めるわけないじゃん。せめて、マンガか、ライトノベル・・・百歩譲って せめて 大学入試関係にしてよ。なんだったか忘れたけど、一匹で飼うと死んじゃう動物だっているんだ。」
「 ?」
「あたしにしちゃ かなり頑張って ここの不自由な暮らしに馴染もうとしてるのに・・・・ちょっと留守にしたからって、怒る事ないじゃん。」
だめだ。
押さえてた気持ちが、溢れてしまう。
「それでも、頑張れるのは 冬獅郎が傍に居てくれるからで――――。」
不意に 冬獅郎が、何も言わず あたしを抱き寄せる。
「わかった。、わりぃのは 俺だ。」
そっか・・・・・
退屈してたんじゃない
寂しかったんだ―――――。
―――――静かに響く雨音が ミントンでせっかく晴れた心を 再び 感傷の渦へと押し流す。
「―――――あたしは囚われの熱帯魚・・・・・」
「はぁ?」
「・・・・・・閉じ込められた水槽から外へは 出られない。」
「!!!」
「だから せめて、水槽の中では 自由に 泳いでいたい・・・・・・・」
「!・・・・・・」
だめ
流されちゃいけない
冬獅郎の引力に 抗って
自分ひとりで 歩いていかなくちゃ だめだ。
だって、冬獅郎に ふさわしいのは
あたしじゃない。
彼は、死神で
護廷十三隊・十番隊・隊長で
なにより 病床に伏せる幼馴染という 想い人がある。
だから あたしは
流されぬようしっかりしなくちゃいけない。
「なーんてね。あたし、そんな可愛いモンじゃないかー。」
抱きしめる腕に 力が入る。
死覇装ごしに、冬獅郎のぬくもりと 小柄だけど鍛え抜かれた力が、たしかにココにいるという存在感が、伝わってくる。
苦しいくらいに 居心地のいい腕の中・・・・・・
「ずるいよ、冬獅郎。いっつも、このパターンで 誤魔化して……」
誤魔化されるあたしも あたしだけど。
「―――すまねぇ………」
「だからぁ、それはもう 言いっこなしっ!」 「そうじゃねぇ!―――そうじゃねぇんだ……」
「だったら、なに?」
冬獅郎は 答えない。
そっちがそのつもりなら あたしも 何も言わず、黙っててやる。
雨は まだ 降り続いている。
「―――――俺だけの………」
え?
「俺だけの………で いてほしかったんだ。が ほかの 奴らに笑いかけるのを 見ると むしゃくしゃするんだ。」
冬獅郎・・・・それって・・・
「それは 無理。あたし、縛られるのは 嫌い。自由で いたい。水槽の中に閉じ込められてるのだけでも きついのに 冬獅郎以外の誰にも会わないなんて しおらしい真似できないから。」
子供っぽいただの独占欲?
それとも・・・・・
「っ、てめぇ オレが 今 どれだけ・・・・・」
「どれだけ なに?」
「くそっ!勝手にしやがれ!!」
毒づいてはいるけど、抱きしめた腕は緩めない。
バカ。
期待しちゃうじゃないか。
あたしは、よろけそうになる心にムチを打つ。
「よ〜し、勝手にしていいんだね?!」
雨は あたしたちを、時間を、閉じ込めるかのように降り続く
けれど
不用意に放った偽りの言葉は 続かない。
投げ合った強がりを
どうすることもできず
ただ
抱き合って
雨音を 聞いていた。
優しい雨音が
カサついた心を
潤してくれるように思えて―――――
ただ
抱き合ったまま
ふたりで 雨音に 耳を傾けていた。
離れていた時間を 雨音で埋めるかのように・・・・・
柚羽です。
色々 考えちゃうと 素直になれないです。
相手を 好きになればなるほど 嫌われたくなくて ちょっと 飾ってみたり、逆に傷つきたくなくて 距離を 置こうとしてみたり・・・
それでも、理性で抗えない吸引力ってある。
ところで
ちょっとは しっとり甘い話に なったかな?
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