今日は、雨。
朝から、雨。
とにかく、雨。
ココには、雨の日なんて 無いと 思ってたのに……。
コレじゃ、巡廻と称した散歩も 出来ない。
前例の無い特別処置で 十番隊の末席に 加えてもらってるけど、実際は 平隊士どころか 死神でさえない。
黒崎君は、大っぴらに ”死神代行”の肩書きを もらってるけど、所在がバレちゃいけないあたしは こそこそ 暮らさなきゃならない。
また、あの人たちに 見付かったらややこしいからって。
という訳で ココでのあたしの役目は 御茶汲み&掃除、そして巡廻(≦散歩≦気晴らし)。
勿論、本当に 任務なら 雨の中 番傘さして 見回らなくちゃいけないわけなんだけど、そうでないなら わざわざ 濡れに出る事はない。
だったら、執務室で書類整理かといえば、そんな重要な事 任されるわけが ない。
おまけに、”隊主会”?とか何とかっていう 大事な会合があるとかで 冬獅郎は 不在。
従って、御茶汲みも 不要。
携帯、PC、TV、CD、DVD、ゲーム機は当然の事、ラジオも 無い。
そして、――――――冬獅郎が 居ない。
つまんない。
一日で アルツハイマー 発症してしまいそう。
身体が 鈍っちゃう。
あたしは 一人、いつも冬獅郎が座ってる 隊長用の立派な椅子に腰掛け、冬獅郎が筆を走らせる机に 触れる。
ほんの少しでも、彼の存在を 感じていたくて……。
扉を叩く ノックの音で 我に返った。
「ハーイ、どうぞ〜。」
気だるい返事と 共に 扉を開けた。
「あ、花太郎君……。」
「こ、こんにちわぁ〜。」
四番隊第七席・山田花太郎。
現世の コンビ二で バイトしてた時は 色々お世話(?)になった。
「ごめん、今、隊長も乱菊さんも 誰も居ないよ。」
「あ、いえ、いいんです……あ、あの……」
言いにくそうに もじもじしてるその背中に 何か 隠してる。
「隠してるモノ、見せて♪」
「あ、あ〜〜、さ〜ん」
これじゃまるで、嫌がる花太郎を あたしが 襲ってるみたいじゃん!
「あ、これ!!」
花太郎が 背中に隠していたのは、バドミントンのラケットと羽根のセットと ちょっと 重たいコンビニ袋。
バドミントンのセットは、あたしが部活で使ってたような試合仕様のではなく、ホームセンターなんかで 売ってる お子様向けのだったけど、バドミントンのセットには 違いない。
花太郎って、よく気が付いて優しいんだよね。
「……もしかして、買ってきてくれた?」
「ついでが あったもので……。さん、退屈なさってるんじゃないかと思って……」
思わず抱きついたら 花太郎ってば、耳まで 真っ赤になっちゃって 可愛いっ!
「今、お茶 淹れたげるから 入って。」
「え〜、いやぁ〜、そ、それは〜」
「何?隊長も 乱菊サンも 居ないから 遠慮なく どうぞ。」
「え?え……っと……」
花太郎は、真っ赤になって 俯いて もじもじ してる。
「今、一人で 退屈してたんだ。お茶ぐらい いいでしょ?」
「―――
さんと ふたりっきりなんて…………」
「え?! 何? なんて 言った?」
「こらぁ、山田七席! こんなトコで ナニ 油売ってんだ?!え?」
「ちゃん、雨の日だというのに君だけは いつものように晴々と美しいねぇ。」
「弓親サン、こんにちわ!そうでもないデス、さっきまで ”夏のアスファルトに干上がり寸前の蛙”状態でした。」
「いやだなぁ、ちゃん そんな醜いモノに 喩えないでよ。」 「ってーか、ー!俺は、無視か?!」
「あれ?一角も 居たんだ。光が 乱反射するから 眩しくて 見えなかったよ。」
「!!てめぇ、喧嘩 売ってんのか!」
「そうだな……いくらなら 買う?安心して。一角が 買えないような値段 つけないから。」
「よおし、上等だ!!十一番隊道場まで 来い!」
「駄目だよ、一角!ちゃんも!」
一角って、乗せ易いから 面白い。
「あ、あ、あのぅ!」
「はぁん!?」
必死の形相で、あたしと一角の間に割って入った花太郎に 一角の怒りの矛先が移動した。
バカだな、花太郎。
あたしと一角が 本気で喧嘩するわけないのに……。
「よ、よ、よ、よ……」
「”よ”って、なんだぁ?”酔っ払い”か? ”与太者”か? ”弱虫”か? ああ?!」
「そっか!全部、一角の事じゃん!」
一角が ギロッと あたしを 睨んだ。
あたしは、視線をそらして 知らん顔をする。
「四番隊道場へ 来ませんか?!!」
叫んだ花太郎の肩が 上下している。
「山田七席!四番隊に道場なんて あんのか? てめーら、剣術は―――」「一角、それは さすがに 失礼と言うモノだよ。」
「あ、あ、あのですね……救護訓練とか救急処置講習とかで……」
「わかった、わかった、四番隊にも 専用道場があって、埃が被ってるわけじゃなく、キチンと有効利用されてるってこったな。そりゃー わかったから、なんで その四番隊の道場へ足を運ばなきゃなんねーんだ?ああ?!」
花太郎の頭を ポンポン叩く一角の手を あたしは 払い除けた。
「そこで、バドミントンをやっていいってコト?!」
花太郎の顔が ほころんだ。
「そ、そうなんです!さすが、さん、察しがいいです♪」
やった!
シャトル打つの、何ヶ月ぶりだろ?
「なんだ?その……バ………」
「バドミントン。」
「そ、そう、それ、なんだ?」
「現世に 行った時に 見てなかったのかい? 現世のスポーツだよ。羽根つきに 似てるかな?ちゃん、選手で 結構 強かったんだよね?」
「弓親サン、何で……?」
「ボクは、君の事なら かなり 色々知ってるつもりさ。」
――――弓親サン………もしかして………ストーカー?
「ってーことは 弓親、まさか……スリーサイズも」
ドカッ!
あたしは なんの躊躇いも 容赦もなく スケベ野郎の 横っ面を 張り倒して、気障野郎を睨みつける。
「あ、ボクは まだ 誰にもちゃんの スリーサイズの話は……」「あー!!やっぱり、斑目さんたち さんのとこに来られてたんですねー!」
廊下の彼方から 大声で 叫びながら 小柄な少年隊士が 駆けてきた。
「山田七席も いらしてたんですか?」
「え……と、六番隊の……」 「理吉です。」
「ンで、その理吉君は 何の用で十番隊執務室へ お出ましになったのかなぁ?」
「恋次さんから、さんに 悪い虫が たからないように 見張っておけって 言われて。」
「悪い虫だあぁ!? 恋次の野郎、ふざけた事言いやがって!」
カッカきてる一角を ほっといて、あたしは 花太郎の腕を引っ張り、そっと 耳打ちする。
「ねぇ、早く 四番隊道場へ連れてって。」
「は、ハイです。」
バドミントンのラケットを左手にしっかり握り、右手は 花太郎の腕をつかんで 主の居ない十番執務室を 後にした。
「ちゃん、どこ 行くのさ?」
立ち去るあたしたちに気付いて 弓親サンが 追ってきた。
「さん、お返事しなくて いいんですか?」
「いいの、いいの。さっきまでのあたしの話、ちゃんと聞いてれば あたしの行き先なんて わかってるはず。それより、あたしは、シャトルを打ちたくて打ちたくて うずうずしてるの!」
あたしは、早歩きから 徐々に小走りになって 四番隊道場へ向かった。

それで、花太郎と二人でバドミントンを 堪能したかと言うとそうじゃない。
案の定、一角&弓親サンが 現れ、それを追ってきた 理吉君と 何処からか聞きつけてきた三席以下の 手の空いた者――――ていうか、緊急事態でもない退屈な雨の日に 厳しい上官も居ない状態(雨の教室で 担任の先生が出張で自習ってのと同じだよね)で、 真面目に仕事してる人が居たら 空から 槍か雹が 降ってくるよ――――が、集まってきて タイマン(ラケット、一組しかないからね)バドミントン大会って ことになって 大いに盛り上がったのである。
………To be cotinued.
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