ふりむけば君が居てくれた







「日番谷隊長。」


隊主会を終え、さっさと帰ろうとする日番谷を 浮竹が呼び止めた。


「君にプレゼントを あげよう♪」


有無を言わさず 包みを渡された。


「・・・・・なんっすか?」


日番谷は、訝しげに 浮竹を見上げるが 浮竹は一向に気にする様子もなく にこにこ微笑んでいる。


「今日は、ホワイトデーという記念日らしい。」
「・・・・・いらねっす。」
「遠慮するな。ホワイトっていうのは、日本語に翻訳すると 白色のことなんだぞ。」


浮竹が うれしそうにウィンクする。


「中身は 真っ白な マシュマロだ。知ってるか?日番谷、これはなぁ――――」 「・・・・・・・・」


日番谷は 返す言葉を持てなかった。


――――どうせ 何を言っても 聞きやしねぇ


「――――で、くんは?」
?」
「彼女の分も用意してあるんだ。」
「だったら 預かって――――」 「いや、これは 是非 自分で渡したいんだ。」


浮竹の笑顔が 青空のように爽やかで 眩しい。
日番谷は ふっと ため息をもらす。
できれば、今日は 野郎にあわせたくなかった。


どこから聞いてきたのか、松本が
『バレンタインデーに 恋次が、を 抱きしめていた』
と 言っていた。 


その場は、どうせ くだらない噂だろうと一笑したが 本当のところは心中穏やかではなかった。




―――――のことになると、余裕ねーのな・・・オレ・・・


コントロールできない感情を 持て余す。







十番隊執務室前に着くと 扉に鍵がかかっていて メモが 貼ってあった。


『庶務室で 書簡整理をしています/松本♪』


――――庶務室っつーことは・・・・・も一緒か?


浮竹を執務室まで伴ってきても、がその場にいなければ、まさか隊舎内を彷徨ってまで探しはしないだろうから、
うまくすれば会わせずに済むかもしれないという望みは 絶たれた。






KNOCK  KNOCK!


「入るぞ。」


庶務室内では、松本とが 大きなダンボール箱の中身を 振り分けていた。


「あー、隊長ぉ そこ 気をつけてください。」


入り口すぐに ひと目で贈物とわかる包みが 山と積まれていた。


「その山、隊長の分ですよ。」
「はぁ?!」
「なんだか勘違いしてるヒト多いんですよぉ・・・・あ、コレは あんたの。」
「あ、はい・・・。」


松本から 包みを受け取ったが 傍らの山に加えた。
どうやら その山は宛てのプレゼントのようだった。



「やあ――――」


脇をすり抜けようとした浮竹が 日番谷の分と説明された山を崩してしまった。


「あ〜もうっ、浮竹隊長〜!」
「すまない・・・・ちょっと くんに・・・・・」
「あたしですか?」


が すっと立って浮竹のほうへ来た。


「これを・・・・」


浮竹が差し出したのは 淡い珊瑚色の縮緬でできた巾着袋。


「え?」
「ホワイトデーのプレゼントだ。」
「そ、そんなの受け取れませんっ。・・・・だって、チョコあげてませんよ?」
「いいんだ、いいんだ。ささっ、開けてみてくれ。気に入るといいんだが」


自分は末席、相手は よその隊の隊長。
一応、敬意は払わなくてはならない。


「なに迷ってンのよ。くれるっていうんだから、もらっちゃいなさいよ。」
「で、でも・・・」


ちらっと 日番谷を見ると 腕を組んで 知らん顔で立っている。


「あらぁ〜キレイよぉ♪」


逡巡するの代わりに松本が巾着袋を受け取って中身を出していた。
ピンクパールが二粒、きらきら光っていた。


「綺麗だろう? 耳飾りに見えるけど――――」


言いながら、浮竹が 一つ摘んで見せる。


「ここが磁気になっていて、血行を良くする耳ツボ健康器具なんだ。 さ、付けてあげよう。」
「え?」


返事を待たずに 浮竹は、の耳にかかった髪をわけて、彼女の耳たぶにイアリング状の磁気健康具をつけた。
興味が無い振りをしていた日番谷だったが、浮竹がの髪や耳に触れるの目にすると、苛立ちを抑えられなくなり、その場を無言で離れた。












「くそっ!」



十番隊執務室に罵声が 響く。
が、応える者はない。
浮竹は、松本が勧めるお茶と菓子を食してから去り、松本ともまた その日の業務を終えて帰宅していた。
日番谷は いらいらして集中できず 仕事が一向にはかどらない。
「くそっ!」

何度目かの悪態をつくと がたがたと片付け始めた。
こんな気分で机に向かっても時間の無駄だと ようやく諦めがついた。
さっさとイライラの元を断った方がいい。




帰り支度を済ませると 霊圧を探った。
ところが 目当ての霊圧が 辿れない。
にわかに苛立ちが焦りに変わる。


――――どこだ? どこにいる?


なんらかのトラブルが発生したのか?
だが、廷内で何か起こったのなら 報告があるはず。
或いは、ソウルソサエティから 出たのか?
ありえなかった。
下層隊士が 所属する隊の隊長の許可なくソウルソサエティ外へ出られるわけがない。



――――アイツ自ら 霊圧を閉じているのか?


だとしたら、いったい 何故?




日番谷は、はやる気持ちを抑えて 今一度 霊圧を探る。


――――アイツの霊圧は揺れがあるから、単に下がっているだけかもしれない。


僅かに感じる霊圧は、居室とは 違う方向だった。


――――まさか


日番谷は、瞬歩に転じた。











双極の丘に通じる林の途中、星祭の日に星を見上げた高台に足を下ろした。


・・・・・居るのか?」


半月が 木々の途切れた枯れ草の中に 人影を映し出す。


「・・と・・うしろう・・・・?」


日番谷が足運びも荒く近づくと 予想どおりにが 膝を抱えて座っていた。


「なにしてんだ、こんなとこでっ!」


心配が 怒りに変わる。


「ここから見る星がきれいだって 教えてくれたじゃん。」
「ああ、教えたが 一人で来たら危ねーだろ!?」
「心配ないよ、瀞霊廷内じゃないか。」
「瀞霊廷内でも・・・・お前・・・何度か・・・・・・くそっ!」


日番谷は を ぐっと引き寄せて 強く抱きしめる。
今までになく 荒々しくて強引な抱擁。


「心配したって 言ってんだ!」


怒っているようにも 泣いているようにも聞こえた。



「冬獅郎・・・・・」


―――――だって、バレンタインのお返しを期待してる自分が嫌だったなんて言えないじゃんか。


日番谷の死覇装を ぎゅっとつかんだ。


「霊圧消して、姿をくらますようなマネしやがって・・・・」





―――――それでも ちゃんと見つけてくれるかどうか賭けてたなんて 言えないじゃんか。





「バカ野郎・・・・・身体が 冷えちまってるだろーが。」
「もう 春だし、そんなに寒くは・・・・・・っくしゅん!」
「ああン? なんか言ったかぁ?」


日番谷が身体を離して の耳にかかる髪をかきあげた。
日番谷の繊細な指に触れられた 耳が、髪が、熱を帯びてゆく。


「な、、、なに?」
「――――耳飾り・・・・・どうした?」
「あ、あれ? はずした。」
「――――そうか。」


安堵したようだった。



淡い月明かりに ふたりの視線が絡み合う。


「あ・・・・・・えっと・・・・」


――――近すぎる・・・・喋ったら、息が かかっちゃう






「お前、今日に限って なんの日なのか 訊かなかったな?」


「・・・・・・・・」
――――訊けないよ。なんて説明すりゃいいのさ?


「どーせ知らねーだろって 思ったのか?」


「・・・・・・・」
――――知ってて 貰えないなら悲しいじゃんか





日番谷はの左手首をつかむと 懐から何か取り出して、しっかりと結んだ。


「あ・・・ミサンガ?」
「クリスマスに 結んでくれたろ?・・・・・願いが叶うって。」


自分の手首のミサンガを に 見せた。


「・・・・・まさか・・・・編んでくれた?」
「ああ。」


白地に翡翠色のシンプルな組柄は 日番谷のようだった。


「お前は、オレのモノだ。」


そう言うと の左手首に 紅い印が付くように 強く口付ける。


「え?、、、、ええええっ//////」


左手首から心臓にまで 電気が駆け抜け 全身が痺れた。



「今は 死神と人間だか・・・・共に生きる為の術は 必ず見つけ出す――――」


日番谷は、の額にかかった前髪を暫らく撫でてから すぅーっと頬から耳へと指をすべらせる。



「だから・・・・勝手に 消えるんじゃねぇ・・・」
「と・・・冬獅郎・・・」




の大きく見開いた瞳が潤んで、月光に きらきら光る。


日番谷は 愛しさのあまり 息苦しくさえあった。
















「・・・・・・




愛している・・・・」














言葉を紡ぎながら唇を寄せ






 そのまま ゆっくり重ねた日番谷は






押し寄せる熱情に






 身を任せた。






























〜 * 〜 * 〜  〜 * 〜 * 〜




【ミサンガ】

プロミスリングとも言い、手芸の組み紐の一種。
刺繍糸を何本もあわせて編み、模様をつける。

手首や足首などに巻きつけて使用し、紐が自然に切れたら願いごとがかなうというジンクスもある。

(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)より 抜粋)





〜 * 〜 * 〜  〜 * 〜 * 〜




はうぁ〜〜〜(〃∇〃)
やぁっと 完成。


ホワイトデー夢として書き始めたのに 一週間も 遅刻してしまいました・・・・・反省


そして、これが 柚羽の 精一杯・・・・・orz






一週遅れの

HAPPY WHITE DAY !





2008.3.21
 前に戻る    




Created by DreamEditor