言いたくて・・・・・言えなくて (後編)










乱菊のブランケットが はらりと床に落ちた。











自分の唇に触れたモノの正体を知りたい気持ちに反して、の瞼は、力が入って ギュッと閉じられたままだった。













どくん・・・・・









優しく触れられる感触は



水面を走るさざ波のように



の 身体の端々へ広がった。








――――な、、、、なに? 冬獅郎? コレ、まさか冬獅郎の・・・・・






顔に迫る気配から 冬獅郎の唇かと思った瞬間、さっきまでのさざ波が 官能的しびれとなって全身を駆け巡り、両足から力が抜けた。




「っおい!!」


崩れ落ちるの身体を 日番谷がつかまえる。


「・・・・・・?」


日番谷の呼びかけに応えられないは、彼の死覇装にしがみついて その胸に顔を埋めた。


「・・・・・・・・・」  「・・・・・・・・・」




日番谷は、おのれの衝動との思いがけない反応に面食らい、で、“ファースト・キス”という言葉が 頭の中をぐるぐるまわっている。








そうして 永遠のようなひとときが過ぎた。





日番谷は、木枯らしに吹かれて小枝にしがみつく小鳥のようなを暖め、包み込むように抱きしめなおす。






「・・・・・わりぃ。そんなに 驚くとは思わなかった・・・・」




日番谷は 愛しくての髪に頬を寄せる。




「・・・・お前があんまり・・・・・」




そこで言葉を切った日番谷は、ゆっくり息を吸った。




―――――いい匂いだ・・・・・




を抱いた腕に力が入る。




「・・・・・我慢できなかった・・・・・・」








二人の胸の鼓動が共鳴し、耳にうるさいほどに響きあう。




「――――――赦せ。」












日番谷の目の前に、ひしゃげた包みが差し出された。


「なんだ?」
「バレンタイン」


が 俯いたまま応える。


「本命チョコ・・・・・だから」


消え入りそうに 小さくつぶやいた。








「―――――ばれんたいん?」



日番谷の訝しげな声が の気持ちを切り替える。


「また、キリスト教の祭か・・・・」
「うそ?! バレンタイン・デーも知らないの?」


あきれたは 日番谷の顔面を まじまじと見た。


「三世紀ごろに 殉教した男だろ?」
「そ、それは、そうかもしれないけど・・・・」
「それと、この包みが なんか関係あんのか?」


は がっくりと 肩を落とした。


「冬獅郎〜〜〜、あんたどこまで世間とズレてんのよぉ。」
「悪かったな、知らねーもんは、知らねーんだ。説明しろ。」


日番谷の眉間に縦皴がはいった。


「えええ?」
「できねーのか?」
「い、いや、だから えっと・・・・・」


再びの鼓動が 騒ぎ出す。


「バレンタイン・デーっていうのは・・・・」


徐々にの声が小さくなり、日番谷の眉間の皴は深くなる。


「お、女の子がぁ・・・」


日番谷の表情は固い。


「えっとぉ・・・・だから・・・・」


―――――しっかりしろ! こんなの あたしらしくないじゃん。


意を決したは、怒鳴るように叫んだ。


「女の子の方から、好きな男の子にチョコを送って、告っていい日なの!」
「・・・・・・」


の勢いに圧倒されたのか 日番谷が ぽかんとしている。


「まだ、わかんないの?! つまり、あたしが冬獅郎のコト 大好きだって言ってんのよ! 鈍感っ!!」


まるで、喧嘩をうっているような告白。
ただ 喧嘩と違って、睨みつけるの顔は 耳まで真っ赤だった。








「くっ・・・・・」


不機嫌そうだった日番谷の表情が 急に緩んだ。


―――――え?えええ??・・・・??


「わりい、お前が・・・くっくっくっくっ」
「な、なに?! まさか 笑ってる?」


不意に日番谷は を 強引に抱き寄せた。


「バレンタイン・デーの意味は、知ってる。松本から 耳にタコができるほど聞かされた。」
「はぁ? だったら、知らないふりしてたってこと?」
「ああ。」
「なんだよ、それ! からかってたの!怒るよ、マジ!!!」
「怒んなよ。」
「ムリ。」


は ふくれっ面で あさっての方角を向いた。


「お前の口から 聞きたかった。」
「?」
「オレのこと、どう思ってるか。」


日番谷の声が 優しい。


「オレが、一方的に想ってるだけなのかと・・・・悔しかった。」


―――――そう言えば、好きって言ったの初めて・・・・か。


日番谷がとぼけなければ、照れ臭くて 何も言えずに チョコを渡すだけだったろう。


・・・・・オレ・・・・マジで、おめーに惚れてる。」


日番谷は 耳元でさらっとささやいて、CHUっと 耳たぶにKISSした。




笑った事を追求したかったのに、なんだか どうでもよくなった。




――――ま、いっか。今日はバレンタインだし、赦してやるか。




日番谷が、からもらった包みを解くと、いびつに潰れた焦げ茶色のかたまりが 二個現れた。

ココアをまぶしたまあるい生チョコトリュフではない、別の物体。


「しくった! 溶けてるぅ!」


あわててが 回収しようとしたが、それより早く 二個とも日番谷の口に消えた。


「ああああ、ごめん!ずっと持ってたからだ。だいじょぶ?・・・・・不味くない?」
「ん・・・・そうだな・・・。気になんのか?」


首を傾げる日番谷が 妙にかわいらしかった。


「う・・・うん。ちょっと。」

「そっか・・・・・・だったら――――」


日番谷は頭を傾げたままに顔を寄せ、そのまま唇を重ねた。 













セカンド・キスは、甘くて苦い味だった・・・・・











〜 * 〜 * 〜  〜 * 〜 * 〜










はふぅ〜〜〜〜〜〜〜
ようやく 完成。
後編の構想、二転三転して なかなか 納得いかなくて、ものっそ 時間かかってしまいました。
やっぱ バレンタイン夢だし、他の話より甘くて 二人の仲も進展させたくって、こんな感じに 仕上がったわけです。


いかがでしたか?
どきどきしてもらえたでしょうか?

.:*・。.2008.3.2.柚羽萌..・゜゚・*:.



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