言いたくて・・・・・言えなくて (中編)







は、十番隊執務室の扉の前で深呼吸した。
今朝一番の デジャヴのように。


――――乱菊さんの話からすると、今なら確実に冬獅郎只一人が在室ってことだよね?


懐に手をのばす。


――――ダイジョブ。入ってる。


いつものように、いつも通りに扉を開けようって思うのに 指先は冷たく 動きがぎこちない。


――――いつもは・・・・・・


「そ、そうだ、ノックだ。ノックしてから 扉を開ける。」


ぼそっと小さく口をついて出た独白に 苦笑する。


――――何やってんだろ。


たとえ 苦笑いでも 笑ったことで 呪縛が溶け ノックをしようと拳を上げた矢先、扉が開いて 日番谷と鉢合わせになった。


「「あっ」」


驚いて、一歩下がったに 日番谷の表情がほぐれた。


「ちょうど、よかった。留守を頼む。松本が戻ったら、今日はもういいと伝えてくれ。」


は 再び執務室前に置き去りになる。


「な、、、、なんだよ・・・・・・・・冬獅郎のバカ。」


後ろ手で扉を閉じて ため息をつく。


「やってらんないよ・・・・・ったく・・・・」


隊長席に ドサッと腰をおろした。








窓から見えるのは きらきら 粉雪。








懐から 小さな包みを取り出して 隊長机の上に転がしてみる。


少し潰れて皴のよった包み紙は、珊瑚色の地色に 浅葱色・露草色・檜皮色で模様を成している千代紙だった。
どんな風にラッピングするか 考えて悩んだ末、あからさまなハート模様は避けて 珊瑚色で想いを表し、日番谷を浅葱色で、自分を表すのに露草色、そして 檜皮色で中身を連想させるコトにした。
ちょっと、がんばって古風で上品なラッピングを狙ったのだった。


「バッカみたい。」


指先で 包みをつついた。


溶かした生チョコを キレイな球体に丸めるのが難しくて 握りすぎて溶け出して 手のひらをチョコでべとべとにしたり、仕上げにまぶしていたココアをうっかり吹いてしまい 死覇装にまでココアをまぶしたりして、乱菊と苦しいほど笑って・・・・
楽しかった。
けれど、一言添えて手渡すだけなのが 何故 こんなに難しいのか。
朝の時点で すんなり渡せていたなら、年に一度のイベントって軽いノリで済ませた。
なのに、こんな風に時間が空いてしまうと いろんなことを考えてしまう。






――――死神と人間。


同じ時を刻んでゆけないのに・・・・・・




このまま どんどん好きになっていったら、いつか来る 別離の時に 耐えられるのだろうか?
想いを告げることに どんな意味を見出せばいい?


再び ため息がもれる。


「もー!留守を任せるなら、行き先ぐらい教えるべきだろ?用の趣がわかれば、こっちだって どれくらい待てばいいか目安になんのに。」


―――――もし・・・・・床に伏せる 大切な幼馴染の見舞いだったら・・・・・・言わない・・・・・か・・・


「もう・・・・やだ・・・・」


は 隊長机に突っ伏した。


「寝ちゃおっかな。」


切なくて、苦しくて、寝られるわけがなかった。


――――毎日逢えて、こんなに近くに居て、優しくしてもらうこともあるのに・・・・・


近づく程に、彼を知る程に、遠ざかっていくようにも思えた。


「ひつがや とうしろう・・・・」


名前を呼ぶと 胸が詰まって痛くなった。




――――もう これ以上 近づかない方が いいのかもしれない。






ぶるっと 身体が震えた。


「寒っ!」


立ち上がって 戸棚から 乱菊の昼寝用ブランケットを取り出す。


「借りるね。」


身体にぐるっと巻きつけて、日番谷の椅子の上で膝を抱えて丸くなる。
柔らかくて肌触りのいいブランケットから ふわっと乱菊の香りが漂った。


――――いい匂い・・・・何て言う匂い袋使ってるのかな?今度買いに行く時、連れてってもらおうっと・・・・






は、乱菊に憧れた。


好きなヒトが、敵になってしまって辛いはずなのに 毅然としてて明るくって思いやりがあって、その上 同性からみても溜息がこぼれるほど魅力的なその容姿・・・・




――――冬獅郎の贅沢者っ。




日番谷が 乱菊を どう思っているのか、気にならないわけではなかった。
けれど、その乱菊が 自分を応援してくれていることが 心の支えだった。 





乱菊と包んだ 小さな贈物を 手にとる。


日本古来の色の名に 想いを映した小柄の千代紙。
包んだのは 甘くて苦い恋の味。




――――どうしよう・・・・・・・
















っ!」


声と扉が開くのが同時だった。


「冬獅郎・・・・・」


あわてて 包みを懐に忍ばせると ブランケットを身に巻きつけたまま 隊長席から降りた。

日番谷は 髪をかきあげなら 近づいてくる。


「すまねぇ、随分待たせちまったな。」
「あ、、、、あの、、あのね、、、」


は ぎこちない笑みを浮かべて立ちすくむ。


「お前 ソレ、寒かったか?」


日番谷は、が ブランケットを巻き付けているのが気になった。


「あ、コレ? うん、ちょっと・・・ちょっとね。けど、これはどうでもいいんだよ。」



左手で ブランケットをギュッと握って、右手は懐の包みに触れる。


「それより冬獅郎、あの、、、あの、、、ちょっ、、話があるんだけど・・・・さ。」


―――――『冬獅郎、チョコあげる』『冬獅郎、あたし、キミが好き』・・・・・



胸の鼓動が 活発に 踊り出す。




―――――だめ・・・・言えない〜〜〜〜//////




「ん?」


傍まで近づいた日番谷が 訝しげにの顔を覗き込んだ。



「お前、なんか変だぞ?」


さっきまで 寒かったはずなのに 急に 暑くなってきた。


「いつもだったら、『遅いっ』とか なんとかって騒ぐとこだろ?」
「そ、、そんなことないってーっ」



日番谷の眉間に皴が寄る。


「具合わりーなら、休んでも構わねーんだぜ?」
「べ、別に、なんともないしぃ・・・」
「熱、あるんじゃねーのか?」
「冷たっ・・・・・・・・」


日番谷がの額に手を充てた。
その手の冷たさが 火照った心をさましてゆく。
それが心地良くって、もっと感じてみたくって 瞼を閉じた。


?」
「もうちょっと、こうしててくれる?」
「あ・・・・ああ、かまわねーけど・・・・」


戸惑った様子の日番谷の声が 耳に心地良かった。


「冬獅郎の手、冷たくて気持ちいいよ。」
「・・・・・・そうか、俺は氷雪系だからな。」
「くすくすくす・・・・なンだよ、それ?」








額に触れていた日番谷の手が





 の髪を 滑って





耳と頬をかすめ、





うなじに行き着いた。








「ん、そこ・・・・いいかも・・・・・」








無邪気に呟いだ唇に







優しくそっと 







触れるモノがあった。












―――――え?











〜 * 〜 * 〜  〜 * 〜 * 〜






・・・・・どうしてもバレンタインに間に合わせたかったのだけど
なんだか 納得いかなくって
悩むうちに
風邪を患ってしまいました。

そんなわけで お待たせした挙句、完結に至りませんでした・・・・orz


バレンタインだからって 気負いすぎた?


甘くしたかったのだけど・・・・
いかがでしたか?


まだ、続きまっす。
よろしく。


2008.2.17



 前に戻る    




Created by DreamEditor