は、十番隊執務室の扉の前で深呼吸した。
―――――早起きしてきたから まだ誰も出勤してないか、居ても“真面目人間”冬獅郎ぐらいなはず。
「でーす。おはようござ――――」
ノックもそこそこに扉を開けると 予想外に客人がいた。
「やあ、おはよう!早いな。」 「邪魔してるよぉ。」
「あ、、、浮竹隊長・・・・・それから・・・・えっと・・・」
「八番隊隊長・京楽だ。」
浮竹と京楽の間で なお 小さく見える日番谷が 教えた。
「し、失礼いたしました!」
ペコリと 頭を下げくるっと回って部屋を出ようとしたを 日番谷が呼び止める。
「っ。」
「はい?」
「二人に、茶を。」
「了解っス!」
ぱたぱたと給湯室へ向かう。
――――なに朝っぱらから 男三人頭寄せて くっちゃべってンのさ?!
護廷十三隊・隊長のうち 最も洞察力に長け、これまでにも 上からの指示に囚われることなく 真実をいち早く見抜いてきた三人である。
彼らが 時折 こうして情報交換しているのを、瀞霊廷に来て日の浅いが 知る由もなかった。
お盆に湯呑を並べ 急須に茶葉をいれて やかんの湯が沸くのを待ちながら、懐に忍ばせた包みの感触を 確かめる。
――――人が せっかく 告ってやろうってのに、台無しじゃん。
今日、この時の為に 小さな胸を痛め、幾度と無くシュミレーションしてきた数日が ムダになったように思えて、気持ちが萎えてしまいそうだった。
――――だめだめ、弱気になっちゃ!作戦変更!試合続行!
大事な包みをギュッと にぎった。
が お茶の準備をしている間に、一人二人と隊士が出勤してきて あちこちで朝の挨拶が交わされ、いつも通りの日常が始まった。
表面上では 淡々とその日の業務が流れていたが 隊士たちは皆 どことなくそわそわし 特に男女間に漂う妙な緊迫感は に 現世を思い出させた。
――――死神っつっても、現世の中高生と変わンないじゃん。
こっそり 苦笑しながら 時間通りに いつもの巡廻コースに出た。
ちらほら雪が舞い始めた瀞霊廷内を 白い息を弾ませながら歩いていたは、少し先の四辻に 阿散井が立っているのを見つけた。
手には 柔らかそうな猩々緋色の風呂敷のような布を持っている。
「よぉ。」
「おっす。」
阿散井は、軽く会釈しただけで通り過ぎようとしたと並んで 歩き出した。
「どしたの? なんか用事あったんじゃないの?」
「つまんねぇ質問すんな。おめーを待ってたんじゃねーか。」
「うわっ、それって、ストーカー!?」
「バカか、てめぇはよぉ?!」
は、額を軽く 小突かれた。
「痛ぁ〜!」
「渡してーもんが あったんだよ。」
恋次が手に持っていた風呂敷のような布を広げて の肩に ふわりと掛けた。
大きな絹のストールだった。
「これ・・・・?」
「寒いだろ?」
「い、いいよ。寒くないって―――――」
去年の七夕、恋次から告られて ふっている。
好意を受けるのは 躊躇われた。
ストールを返そうとして伸ばした手を 恋次が握った。
「気にすんな。」
「でも、なんか悪いよ。」
「オレの気の済むようにさせてくれ。」
「そんなにしたって、恋次にチョコは あげないよ。」
「ンなもん、要らねぇって。」
声の調子から 欲しかったことは明白だったが、武士は喰わねど高楊枝。
気付かぬふりをするのが礼儀。
如月は拾と四日。
どんより曇った 雪空の瀞霊廷。
二人の足音以外に 響く音もない。
純白の幾何学模様が 肌に触れては 消えてゆく。
何の脈絡も無く不意に 阿散井が、を抱き寄せた。
「・・・・・・」
吐く息が 耳に暖かい。
――――届かないとわかってしまったのに、なぜ オレは 諦められない?
なぜ、こんなにもお前が愛おしい?
「こらっ、恋次!やめなって。」
「オレ・・・待ってるから・・・」
「恋次・・・・・」
ストール越しに 阿散井の冷え切った体温が伝わってくる。
それがそのまま 彼の切ない想いを訴えているように思えて、泣きたくなった。
「ゴメン・・・・ゴメンね、恋次・・・・・」
「謝ンなよ。オレが辛いじゃねーか。」
――――お前の身体は抱きしめられても、心までは抱きしめられないンだな
阿散井が名残惜しそうに を解き放った。
次の辻を曲がれば 巡廻は終わる。
「じゃあ、またな。」
「恋次っ、これ!」
「やるってンだよ。」
後姿で手を振って、去ってゆく。
「ありがと・・・・・で、いいのかな?」
受け取ることに抵抗がないわけじゃなかった。
けれど、突っ返すこともできず、困惑のまま 書簡預り所へ足を運んだ。
「十番隊の書簡は、コレです。」
見慣れた封書の束ではなく、大小様々なサイズの小包が山と入ったダンボール箱が 目の前に置かれた。
「お一人で 運べますか?」
両手で抱えてみると、歩きにくくはあったが 運べない重さじゃなかった。
「手伝いを出しましょうか?」
「う・・・ん、ありがと。だいじょぶ、なんとか行けそう。」
――――もしかして ほとんど 冬獅郎宛のチョコ?!
執務室に近づくにつれ、だんだん腹が立ってきた。
―――――なんで、あたしが冬獅郎宛のチョコを運ばなきゃなんないんだ。バッカみたい。
手が空かないので、足でノックする。
DUM、DUM、DUM!!
「あ〜け〜て〜〜〜っ!」
中でバタバタっと音がして 扉が開いた。
「あら、?」
現れた乱菊に 押し付けるようにダンボール箱を渡す。
「失礼しますっ!」
乱菊に顔を覗きこまれる隙を与えず、踵を返して歩き出した。
「ちょっと、!休憩していきなさいよ。」
乱菊は 段ボール箱を床に投げ出すように置いての後を追った。
「ちゃんと言えたの?」
「・・・・・・・。」
「っふぅ〜〜〜。まだなのね?」
は俯いて目線を合わせない。
「しゃんとしなさいっ!」
乱菊が の背をパシンっと叩いた。
「うっ・・・・」
「どうしたの?ほらほら、思いっきり当ってぶつかる。」
「当って砕けろって?」
ちょっと、拗ねたように応えた。
「ぐずぐず煮え切らないでいるよりは、いいんじゃない?」
乱菊がころころと明るく笑った。
「面白がってる。」
「そんなこと ないない。だって、砕けるわけないのに怖がってるが かわいくって♪」
乱菊がをギュッと 抱きしめた。
「だ、だって・・・・あんなにいっぱい・・・・」
「ああ、あの段ボール箱?」
「う・・・・ん・・・・」
「なに?あんなの気になるの?ホント、おバカさんね☆」
乱菊はに デコピンしてから ストールを剥ぎ取った。
「あ・・・・」
「あったかそうね、コレ♪ どうしたの?」
「え・・・・っと・・・・・」
「いい、いい、ムリに説明しなくていいわ。でも、隊長に逢うのには必要ないわね。」
「う・・・・ん。」
ストールをさっと羽織った乱菊は 執務室前までを引っ張って戻った。
「隊長にとって、あんたの用事ほど意味のあるモノは ココに入ってないわ。」
そう言って乱菊は、大小の包みがたくさん入った段ボール箱を ひょいっと抱えた。
「コレ、庶務室に置いておくわね。あんたの用事が済んでから 取りに行きなさい。いいわね。」
「え? ええええええっ!」
十番隊執務室前にを 置き去りに 乱菊は立ち去った。
〜 * 〜 * 〜

〜 * 〜 * 〜
あの・・・・・
恋次が ちょっと 切なくて・・・・
らしくないですかね?
ま、ヒトにはいろんな面があるってコトで たまには こんな感じもありかと。
(開き直っていいのかっ?)
後半に 乞うご期待♪
(いいのか、そんなコト言って)
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