04.FUMBLE
冬獅郎は 戸惑っていた。
このところの騒動続きで、文字通り目が 回るほど忙しい。
にもかかわらず、気が付けば ココへ 足を運んでいた。
眠り続けるの顔を 覗き込む。
―――なんて、気持ち良さそうに 眠っていやがんだ。こっちの気も 知らねーで……。
その 自分の”気”が わからない。
浦原に 検査を 依頼したのだから、任せっきりにして 結果報告を 待てばいい。
では、なぜ ここへ来てしまったのか?
眠り続けるの姿に、心を患ったまま床に臥している雛森が 重なる。
己の無力を 噛み締める。
“彼女”から 日常を奪ってしまったのは、己の未熟さでは なかったか?
仮に”彼女”が、バウントの生き残りであり 切り札だったとしても、自分に もっと 技量があれば 阻止出来たのではないか?
冬獅郎の指が 無意識にの額に触れ、乱れた髪を 整える。
いくら霊圧高く 力があり 天才児と呼ばれようが、自分に 護廷十三隊の隊長職は 荷が克ちすぎたか?
―――すまねぇ……。
罪悪感から、”彼女”に詫びる為に 来たのか?
そうではないように 思う。
知らず知らず、冬獅郎の指がの頬を 優しく撫でていた。
「う……ん……」
が身じろぎをして初めて 冬獅郎は、自分の所作に 気が付き、慌てて 手を引っ込める。
「”恋煩い”っすね?」
振り向くと 浦原が 背後に控えていた。
「若いっていいっすねぇ〜、初々しくって。」
「っ!て、てめぇ、いつから?!」
―――霊圧に 気づかなかった?
この男が “できる”から?
それとも……己の至らなさ……か?
―――弱気になるなんて……らしくねぇ。
冬獅郎は、強くありたいと 思う。
強く、大きく、頼れる男に……。
彼にとって 雛森の存在が、どれほど 影響力を持っているか 本人は 把握できていない。
浦原は、そこに 彼の幼さを 感じる。
―――頭が回りすぎるってのも 考えモノって事ッスね。
今回、直に接触して “日番谷冬獅郎”の 人となりが 良く判った。
――もう少し 肩の力を抜いて……黒崎サンや阿散井サンのように……。
「ああ、あたしの事なら お構いなく。内緒にしておきますから、安心して お続けになってください。」
浦原が、にやっと 笑みを浮かべた。
冬獅郎の白い肌が、朱に染まる。
「そ、そうじゃねぇ!そんなんじゃ―――」
彼にしては 珍しく狼狽し、取り消す声が 大きくなる。
「う……ん?何?何なの……?」
が目を覚まし、キョロキョロと 辺りを 見回した。
「えーっと……あれ?……ここどこ?あたし…………。」
「おはよーございますぅ、つっても もう 朝じゃありませんが。随分 ぐっすりと 眠っておられましたッスよ。日頃のお疲れも 吹き飛んだんじゃありませんか?」
浦原は、その場を離れようとする冬獅郎を 掴んで 無理やり引きとめながら 答えた。
「俺は、帰る。」
「何 言ってんスか?折角、“想い人”が お目覚めになられたんスから、ゆっくりしてってください―――」
「だから、なんで そうなる!?」
「あ!五手、十三手……十番手……?あれ?」
は、そこでしばらく考えてから 叫ぶ事となった。
「思い出した!あたし、眠ったんじゃなくて、あんたが眠らせたんじゃない!!」
「ピンポーン!良く出来ました。」
に指さされた浦原が 嬉しそうに笑った。
「こんなの 当っても、全っ然 嬉しくないし!そこの、えっと……十手だか、五手だったかの…チビッコ隊長?君は、あたしを拉致った 実行犯!!」
「日番谷隊長だ!それに 人聞きの悪い言い方するな!任意同行してもらっただけだ。」
「古風な言い回しだと”かどわかし”ッスね?」
浦原が 面白がって付け加える。
「混ぜっかえすな!」
「そうよ!誘拐犯でも、“かどわかし”でも、KIDNAPでも 何でもいいわ、とにかく あたし、帰らせてもらうから!」
「きっどなっぷ?」
「英語で誘拐の事……って、何これ〜?!」
は、布団から立ち上がって 自分の姿に 気が付いた。
知らぬ間に 浴衣を着せられ、両手両足に 数珠のようなものが はめられている。
「すみませんねぇ、色々と 調べたかったもので。」
浦原が 事も無げに言う。
「ちょっと……それって……」
「ま、女手はウルルしか おりませんから、あたしも 手伝いました〜。ジンタとテッサイには 席を外させましたからぁ。」
そう言って、しれっと笑った。
「バカー!!」
は、浦原に枕を投げつけたが、さらりと かわされる。
「胸元!裾!!」
背を向けた冬獅郎に注意されて は、着慣れぬ浴衣が 乱れた事に気づき、襟と裾を手で押さえてへたり込むと、 再び布団を被った。
「せ、制服は?!まさか、売り飛ばしたって わけじゃないでしょうね!」
浦原が ポンと 手を打った。
「あー!その手が ありましたねぇ。」
「浦原、まさか……てめえ―――。」
「やだなー、シロちゃんまでぇ。冗談っスよ、じょ・う・だ・ん。そんな怖い顔で 睨まないでくださいよ。お嬢さんに似せた義骸に着せてご自宅に派遣しましたっス。今頃は お嬢さんのご自宅で りっぱに身代わりを演じている筈です。」
「身代わり?それじゃ、母さんたちは、あたしの事……。」
「ハイ、ご安心ください。何の心配も されてませんから。怖い目にあって、記憶に 多少 混乱が生じてるかなーと思われてるかも しれませんが、気立てのいい改造魂魄を厳選して義骸に仕込んで影武者に仕立てましたから、満足されていることでしょう。お嬢さんは ご両親に気兼ねなく 外泊が続けられますよ。」
「まだ 帰してやれねーのか?」
「はじめに 申し上げましたよ、時間がかかりますって。」
は、自分の置かれた状況を 受け入れかねていた。
―――親が気づかない程 精巧な身代わり?・・・・“カイゾウコンパク”?・・・・“ギガイ”?・・・・・って 何? これは、夢? 現実?
「それで……もし……黒と出れば―――」
冬獅郎の声が 自然と低くなる。
「さらに、長期滞在ってことに。」
「何、それ?冗談じゃない!あたし、帰る!!」
は 布団を蹴散らせて 立ち上がった。
「勿論、冗談なんかじゃありません。あなたの為にも ココに居ていただきます。現に今も―――」
何かを察知し、冬獅郎と浦原にサッと緊張が走った。
廊下をバタバタと走る複数の足音が聞こえて 襖がパシンっと開けられた。
目覚める?
05. A PRISONER へ
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