03・SUSPICION
冬獅郎は、小さな身体とは思えぬ力で
を拘束し、疾風の如く駆け 一瞬後には、懐かしい昭和初期の駄菓子屋風佇まいの 浦原商店に 降り立っていた。
「邪魔するぜ。」
引き戸を開け 暗い店内に入ると「はーい」という返事と共に 白熱灯が点いた。
「浦原は居るか?」
「奥に……」
ウルルの答えを待たず 冬獅郎は、彼女を担いだまま 履物を脱いで あがった。
―――まさか、拉致られた?
は、節操無く暴れるのを止めて チャンスがくるまで 体力を温存する事にした。
「―――観念したのか?」
「………ふん」
廊下を歩いた先の 襖を開けて 中に入ったところで
は 床に下ろされた。
絵に描いたような 古き良き時代の茶の間で 浦原組の面々が ちゃぶ台を囲み 番茶でまったりと くつろいでいた。
「あれぇ、珍しいっスねぇ。チビッコたいちょーさん、お一人っスか?」
「日番谷隊長だ。」
冬獅郎の眉間に 皴が刻まれる。
ジンタは 冬獅郎よりも、その後ろにぺたんと座り込んで あさっての方向を見ている女子高生が 気にかかった。
空座町界隈で 見ない制服だった。
「なんっすか?現世の女子高生と 逢引きっすか?チビッコといえど やっぱ 男っすねぇ〜。ウルル、たいちょーさんに お部屋を―――。」
「用意せんでいい!」
立ち上がりかけたウルルが、冬獅郎の声に びくっとして縮こまる。
冬獅郎の眉間の皴が ギリリと音を立てそうだった。
「急務だ。この者の正体を 調べてくれ。」
浦原は、テッサイの顔をちらっと見てから 答えた。
「私ンとこ来られても 設備が整ってないので 時間かかりますよ。瀞霊廷の科学技術局へ―――。」
「本気で 言ってんのか?!」
冬獅郎の声が 一層 怒気を含んだものになる。
「冗談っスよ〜〜。あの人の手にかかっちゃ、戻って来る頃には 肉片になってるでしょうねぇ。」
「俺は、今 ハンパねーほど 虫の居所が わりい。うぜぇ 突っ込みは 止めろ。」
「―――では、真面目に 伺いましょうか。」
浦原が 居ずまいを 正した。
瀞霊廷から追放された浦原を(その存在が公然の秘密だったとしても)護廷十三隊の隊長が 頼ってくるのは、異例の事態である。
それを 鑑みると 日番谷に 何か考えがあって 隠密に処理したいのであろうことは 想像に難くなかった。
謎の女子高生がそっぽを向いているのを良い事に じろじろと観察していたジンタの頭を テッサイが掴んで前を向かせ、その腹いせに ジンタにど突かれたウルルは「きゃっ」と小さな声を あげた。
その声に
が 振り向き 三人と目が合った。
見知らぬ場所に連れ込まれてから 今後の成り行きに 気を張り詰めていた
は、胡散臭いようで どこかアットホームで暖かいモノを 浦原組に感じて 少なからず 安心した。
―――テレビや 新聞を賑わせているような 酷い目には 遭わずに済むかも……
そうはいっても、同意なしに拘束され、得体の知れない容疑をかけられているのは事実なので 油断禁物と心に言い聞かせる。
ウルルが べそをかいたような表情を 彼女に向けてから、自分たちの冷めたお茶を 淹れなおし、遅ればせながら 不意の来客二人にも お茶を 勧めた。
「バウントの事は、知っているな。奴らとの戦は,予想外に熾烈を極め,愛染の謀反以来の隊長格不足もあって、瀞霊廷内の指示系統が 混乱している。カリヤは、黒崎が仕留めたが、その際、奴から何かの離脱が 認められた。その”モノ”の正体は不明だが、カリヤに同化吸収されていたドールが 逆にカリヤの一部を乗っ取った可能性があり、平隊士に追わせるには荷が重く、俺が追ってきた。―――だが、仕留められず、こいつに 吸収されてしまった。」
その場に居る者たちの視線が
に 集まった。
「と、言う事は………最悪、このお嬢サンが、バウントの最後の切り札で、カリヤの継承者かもしれない……と?」
冬獅郎と浦原の会話を どこか遠くで聞きながら、
は 脱出方法を画策していたが、浦原の今の発言は、聞き逃すわけに いかなかった。
「ちょっと、勝手な事 言わないでよ!私は、ただの女子高生で、あんたたちに拉致られた被害者!切り札でも 継承者でもないから!」
「あくまで、可能性の話だ。」
「全く無関係って説も 捨てられない……?」
「ちょっと、あんたたち、聞いてる?さっきから、無関係だって 言ってるじゃない?!」
浦原が目線を送ると 冬獅郎は 頷いた。
「なかなか、難しいですね。もともとバウントとドールは、魂魄の在り様が 我々とは異なりますからね……。このお嬢サンが、バウントとのMIXで 普通の人間と同じ霊圧を 発しているとしたら……そこに隠れるドールの気配を 探るのは、海底で 真水を得るようなもんですね。」
「手に余る……か?」
「いえ、時間かかりますが、やれますよ。」
「なるべく 急いでくれ。破面の動きが、報告に挙がっている。」
「そうですか、そういうことなら、仕方ありませんね。」
浦原と冬獅郎が 視線を交わして頷き合った次の瞬間、浦原の手が
の視界を覆って気を発し、
は 意識を失って その場に 崩れ落ちた。
「すいませんねぇ、お気の毒とは思いますが、協力していただきますね。」
「いや、もう聞こえてないだろ……?」
目覚める?
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