神無月は末の十番隊執務室。
眉間に皴を刻んだ日番谷ひとり、事務処理に追われていた。
彼の副官は、朝からなにやらそわそわと落ち着かなかったが 午後の休憩が終わったあたりから本格的に仕事を投げ出した。
もともと仕事に励むタイプでは無いのだが それにしても今日はひど過ぎる。
今は、お気に入りの末席隊士まで巻き込んで、執務室の奥の部屋できゃいきゃい騒いでいた。
「う・・・んと、もうちょっと こうした方が かわいいと思うのよね〜。」
「こう・・・・・ですか?」
「んっ・・・・そうそう〜♪ いい感じよ。」
――――あいつら、まだ就業時間内ってーのに
日番谷はため息をついて湯呑に手を伸ばす。
と、奥が急に静かになった。
不審に思って耳を澄ましたその時、バタンっと扉が開いた。
「「TRICK or TREAT♪」」
はしゃいだ掛け声と共に現れたのは、例の如く これでもかっと言わんばかりの悩殺衣装で悩ましく微笑む”黒魔女”乱菊と 艶光りの毛並みが身体のラインを浮き立たせた”黒猫”姿に恥らう。
日番谷は、椅子ごとひっくり返りそうになる。
「乱菊サン、やっぱ ちょっと 恥ずかしいですぅ〜。こんなパンストみたいな素材じゃなくて、ほわっとしたぬいぐるみみたいなのなかったんですかぁ?」
乱菊とは違ってスレンダーな身体のラインがかえって色っぽいは、動きに合わせて揺れる黒い尻尾と困惑顔に黒耳のカチューシャがよく似合っていた。
日番谷は、眩暈を覚えて慌てて目をそらす。
「あらぁ、あんなお子様向けなのはだめよ。は そういうSEXYな方が絶対似合うって! ね、たいちょー♪」
「松本、まだ仕事中だぞ。」
日番谷は 書類に目を落として不機嫌そうに応えた。
「た・い・ちょ♪ 耳まで真っ赤ですよぉ☆」
「なっ////そんなことねぇ!! 大体、そのふざけた格好はなんだ!?」
「今夜のハローウィン仮装パーティ用の衣装ですよぉ。」
「ハローウィンだぁ? キリスト教だかなんだかの万聖節前夜に魔界の者共がはしゃぎまわるって、現世の しかも西洋の祭だろ?」
「さすが たいちょー、物知りですねぇ。」
「おめーに褒められてもうれしくねー。」
「たいちょーの衣装も用意してありますよ。 ほら♪」
広げて見せたのは、タキシードにコウモリマントの吸血鬼衣装。
「・・・・・・」
「気に入りませんかぁ? だったら、こっちは?」
次に出てきたのは、白銀狼の着ぐるみ。
「あー、あたし、そっちのがいい!」
「だめだめ、は 魔女の黒猫なんだからっ」
「ま〜つ〜も〜と〜、ここはどこだ。」
「十番隊執務室。」
「じゃ、なくて」
「瀞霊廷。」
「で、なんでハローウィンなんだ?」
「だから、護廷十三隊で仮装パーティやるんじゃないですかぁ。」
「・・・・・・あれって、冗談じゃなかったのか・・・・・」
「一番隊・山本総隊長も 張り切ってらっしゃいましたよ。」
乱菊がにっこり笑い、日番谷は机に突っ伏した。
「いっけな〜い、もうこんな時間! じゃ、あたし 会場準備しなくちゃいけないから先 行くわねっ。、たいちょーをちゃんと着替えさせて連れてきて。 頼んだわよ。」
乱菊が いつもの如く日番谷を残して、嵐のように駆け出していった。
「・・・・・たいちょー・・・?」
は 机上に崩れたままの日番谷に 声をかけた。
「・・・・・・・」
「えっと・・・どっちにする?」
「・・・・・・・」
「吸血鬼もいいけど、狼男も捨てがたいよ。」
「・・・・・・・」
「ねぇ・・・・冬獅郎・・・・?」
「・・・・・・・」
「TRICK or TREAT!」
狼男のフード部分を日番谷の頭に被せてみた。
「あっ///」
「なんだ」
狼耳を頭に 日番谷がようやく顔を上げた。
「・・・・・かわいいかも。」
「ちっとも うれしかねーよ!」
イラッとした日番谷が 狼耳のフードを払い除けた。
「おめー、マジで その格好で人前に出る気か?」
「こらっ、乱暴に扱うな。」
は、床に落とされた白銀狼の着ぐるみを拾って埃を払う。
「せっかくのキレイな毛並みが 汚れちゃうじゃないか。」
「だめだ。」
「え?」
「そ、そんな格好で行ってみろ 野獣どもの餌食になっちまうぞ。」
「でも、乱菊さんが――――」
「隊長のオレが だめだっつってんだ。」
「乱菊サンの黒魔女とセットなんだってば!」
さっきまでは、少し恥ずかしく思っていたのに、日番谷に反対されると羞恥心に反発心が勝った。
「いいから、脱げ!」
「やだ!」
「脱げっつってんだ。」
「エッチ!スケベ!変態っ!」
「!! ちげーよ! その白狼のに着替えろってんだ!」
「狼男は黒魔女のお供じゃないよ。」
「さっき、こっちがいいって 言ってたじゃねーか?」
「・・・・・・忘れたー。」
「、てんめぇ〜!」
日番谷は 実力行使に出た。
「オレが脱げっつってんだ!」
の背中のファスナーを下ろそうとする。
「うわっ、やめっ!」
「こっちに着替えろっ」
「やだ!」
二人が組み合ったまま床に倒れこんだ時、執務室の扉が開いた。
「とりっく おあ とりーと! お菓子くれなきゃ、悪戯するぞぃ。」
入ってきたのは、キョンシー姿の山本総隊長だった。
日番谷の死覇装は乱れ、も衣装がずれて肩が露出している。
誰が見ても 日番谷がを襲っているとしか思えない。
「「あっ!」」
三人は、しばしそのまま凍りついた。
やがて 山本は、「・・・・・・・邪魔したのぅ・・・・」と言って踵を返すと「ゆるりとな」と背中で告げて去った。
「たいちょー・・・・今の・・・・」
「・・・・山本総隊長だったな。」
「やばくない? この体勢じゃ きっと 変に誤解してってる。」
「・・・・・かもな。」
「・・・・でさ、そろそろ どいてくれない? さすがに重いんだけど。」
「・・・・そうだな。誤解を解くのは面倒だから 事実にしちまうか。」
「へ?・・・・事実って・・・・?」
を組み敷き見下ろした日番谷の 翠の瞳が 妖しく光った。
「え?えー!ちょっ、待って、冬獅郎、どいて、放して。」
は、逃れようともがいたが、肩をガッチリ床に押さえつけられ馬乗りになられては なすすべもない。
「さあ・・・・・・狼男と吸血鬼・・・・・どっちか選べよ・・・」
日番谷が妖しい笑みを浮かべて囁いた。
「うそっ! マジなわけ? 」
「・・・・ああ・・・・マジ・・・・」
日番谷の顔が迫ってきた。
「の好きな方で 襲ってやるぜ。」
「うわぁ、だめっ、だめったら! ちょ、待って、心の準備が! や、やだって!」
耐え切れず、は ぎゅっと固く目を閉じた。
CHU♪
日番谷の唇が額に軽く触れた。
「
TRICK or TREAT」
「え?」
目を開けると 日番谷がやんちゃな顔で笑っていた。
「”お菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ”」
「あ・・・・・・」
「この程度じゃ 物足りねーか?」
「う/////////」
は、とたんに真っ赤になった。
「バカ!」
瀞霊廷大集会室は、様々な仮装に身を包んだ死神たちで賑わっていた。
「なんで黒猫じゃなくて、白銀狼なわけ?」
何杯目かのシャンパン片手に乱菊が 残念そうに言った。
「えっと・・・・お茶をこぼして黒猫の衣装、濡らしちゃったんです。」
が ふわふわ着ぐるみの耳突きフードを揺らして応える。
「ふ〜ん・・・・・で、たいちょーは?」
「あそこです。」
指差す先で 黒いタキシードにコウモリマントのちっちゃな吸血鬼が 上半身半脱ぎの大柄肉体美キョンシー相手に 何やら必死に訴えていた。
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柚羽です。
ジャンプコミックス”カラブリ+”面白かった〜♪
で、山本総隊長のお茶目ぶりが気に入って 今回の友情出演(?)となったわけですね☆
何に仮装したら面白いか 考えるの楽しかった♪
ところでアノ後、冬獅郎は を 襲っちゃったんでしょうかねぇ?
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